たとえば明日とか

たとえば明日とか死ぬ

呪いはそばにデートはするね

昨日はデートだった

もう何回目かわからないデートをなんかよくわからない人としている。家に行ってハグして寝ても一度もセックスしないひと。映画が好きなひと。家がごちゃごちゃしているひと。昨日はすきやきをたべた。泊まっていけばと言われたのでセックスしないことは知っていたけどシャワーを浴びた。シャワーから戻ったらずっと時計をしてるの?と聞かれた。ずっとしていますよと言った。なんで?寝る時もしてるの?と聞かれた。はい、寝る時もですと言った。安心するの?と聞かれた。大切なものなんです、と立ち上がりながら答えてドライヤーをかけた。そっけなかったかな、変な風だったかなと思った。でもわたしにはそれ以上に言いようがないのだ。大切なものなんです。大切な人との大切な思い出なんです。大切な人がいないときにも、たった今も、わたしにとっては大切な思い出なんです。

時計は、勝手にわたしがせんせいと同じブランドのものを買った。付き合っていた時にわたしが一緒に欲しいと言ったのをせんせいがあとから1人で買ったから、わたしもあとから1人で買った。そういう時計だ。せんせいがこの間呪物だと言って笑っていた。そういう時計だ。

思い出を、話すことをやめた。誰かに話したら薄まってしまうから、誰かの解釈が入ったせんせいとわたしの話なんてこの世になくていいから、もう話さない。デートしているなんかよくわからない人とこれからどうなるかわからないけど、たとえ誰と付き合ったとしても結婚したとしても絶対に話さない。傷つけるからとか綺麗事は言わない。誰にも知られなくていいことがあるとわかったからもう話さない。

ただ呪いなのか恋なのかわからないものは左腕にずっとある。ずっとあっていいし、呪われていたってせんせいをずっと1番にすきだって、わたしは他の人とデートもする。たぶんそのうち手を繋いで歩いたり、キスしたりセックスしたりすることもあるだろう

ずっと一緒にいてくださいね、とたまに時計を見て思う。わたし、これからも馬鹿みたいに泣いたり笑ったりするから一緒にいてくださいね。そばにいなくてもずっと一緒にいてくださいね。

ところで1年前まったく同じような状況に陥った結果兄が亡くなったと嘘か本当か今となってはわからないことを言われフェードアウトした男がいたのだが、今回のなんかよくわからない人は誰も不健康にせずにわたしとの関係性を考えてくれるだろうか。よく考えたら嘘だとして兄を殺さなければいけないほどに追い詰めてしまったわたしって一体なんなんだろうか。今回は頑張りたいぞ、頑張れまなちゃん