たとえば明日とか

たとえば明日とか死ぬ

何色に咲くの

泣きたくなるほど大切な人がいるだろうか。わたしにはいる。夜になったスターバックスでなぜかいろんなことを思い出して泣きそうなほど大事な人がいる

その人とは15歳の時に会った。やられたと思った。わたしが絶対に入部すると決めていたハンドボール部のマネージャーを同じく希望してきた女が、その人だ

髪の毛が少し茶色くてしかもそれは地毛だとわかる色でなんだか明るくてよく笑う感じで絶対にこの人はすぐに馴染んでいってわたしはいつもみたいな疎外感に襲われてマネージャーを辞めることになるんだろうなと思った

結論から言うとその人は確かによく笑ってすぐに部活に馴染んでいったけどわたしを仲間はずれなんかにしなかったし10年後のいまもこうして本当に大切な友達としている。

この10年間でその人が泣くほどの失恋をしたところを3回見た。失恋でなくても泣くほど辛いことは数えられないくらいあってその度に全然励ませないカラオケをした。ムーンクライングを流すといつも泣いて、結局2人で笑った。

もちろんほとんどのときは笑っていたし、そもそも大人になってから彼女はあまりすぐに電話したりしなくなっていたからわたしが失恋などを知るのはそれが起きた1ヶ月後とかだったりしたけど、会った時の話ぶりで悲しかったことも辛かったことも少しわかった。

好きな人が他の誰かと手を繋いでいるのを目撃して泣いたその人はもうおらず、おそらくは1人で泣くようになったのだと思う。いつのまにか顔にあったほくろもきれいに消えて、わたしが勝手にチャームポイントみたいに思っていた八重歯も今はすっかりおさまっている。

別人みたいだと思ったことはない。わたしの前で泣かなくなっても、ほくろも八重歯もなくなっても、いつも一緒に同じだけ笑って泣いて怒ってくれるひとだ。会った時からいままでそれが変わったことはなくて、だからたとえばこれから彼女がいくら太ったり痩せたり整形したりあるいは全然想像もつかない言語とかを話し始めたり、または犬や猫や金魚に生まれ変わったとしてもわたしにとって大切なたった1人の存在であることに変わりはない

実は宇宙人だったとしても、鳥とか虫になったとしてもその人はまた一緒に笑って泣いて怒ってくれることを信じて確信すらしているから、わたしにとってそんなことはどうでもいいのだった

これまでの10年間ほんとうに色々なことがあった。わたしたちは目まぐるしく大人になるほかなかったし、その中でたぶんすれ違っていった思いや価値観もあっただろうと思う。これからの10年間もいろんなことが起きて、同じようにいろいろなことが変わっていくとわかっている

たぶん、お互いより近くて好きな人ができたりもする。もしかしたらこの10年間では起きなかったすごく大きな喧嘩とかも起きるかもしれない。本当にもしかしたら会えないようなところにいってしまうこともあるかもしれない。それでもつぎの10年後も、その人はわたしの大切な人だ。

今日、大切な人が26歳になった。これまでもこれからも大切な人だ。10年前から今までを泣いたり笑ったりして過ごした。彼女のこれからの10年間はなるべく楽しいことばかりあって欲しいと思う。泣くこともあるだろう。でも何倍も何十倍も笑っていてほしい。泣いちゃうときにはこれからも一緒にいたい。一緒じゃなくても思い出して笑ってしまうようなことをこれからもずっとたくさん増やせたらいいと思っている。1416字に渡る長い前振りはこのくらいにし、そろそろ本題に入って終わる。これから先の数行はただ1人に向けたお手紙だから読まなくてもいい。

お誕生日おめでとう。あなたの1年が、これから先の10年や20年や50年がずっとずっときらきらしていますように。大好きです。またすぐに会おうね

おわり